空地の有効活用① 土地や家屋の財産評価額
Q.母親の所有する財産は下記のとおりです。父親はすでに他界しており、母親の法定相続人は長男と二男の2人です。
・母親の自宅の土地建物(相続税評価額は約5,000万円)
・自宅近隣の青空駐車場(相続税評価額は約1億円)
・預貯金(約5,000万円)
自宅近隣の青空駐車場に賃貸アパートを建築すると相続税の節税ができると不動産会社から提案がありました。どのようなことなのでしょうか。
◆ポイント!
①青空駐車場の敷地の財産評価は「自用地」として評価します。
②賃貸アパートの敷地の財産評価は「貸家建付地」として評価します。
③家屋の固定資産税評価額は建築請負金額の6割から7割程度です。
A.
◆土地の評価
相続財産である土地を財産評価するにあたり、その土地の利用状態が財産評価額に影響を与えます。このQにおける母親の相続財産の青空駐車場は、財産評価額は1億円です。その青空駐車場に賃貸アパートを建築した場合の土地の財産評価額はどのようになるのでしょうか。
○自用地
「自用地」とは、他者が使用する権利のない土地のことをいいます。自用地として評価する代表的な例は下記の敷地です。
・所有者の自宅の敷地
・親族の自宅の敷地(土地が使用貸借である場合)
・青空駐車場の敷地
青空駐車場は、駐車場利用者である他者が使用する土地なのに、なぜ自用地評価する必要があるのでしょうか。国税庁「タックスアンサー」には次のとおり説明されています。
国税庁タックスアンサー №4627 貸駐車場として利用している土地の評価
[平成29年4月1日現在法令等]
土地の所有者が、自らその土地を貸駐車場として利用している場合には、その土地の自用地としての価額により評価します。このように自用地としての価額により評価するのは、土地の所有者が、その土地をそのままの状態で(又は土地に設備を施して)貸駐車場を経営することは、その土地で一定の期間、自動車を保管することを引き受けることであり、このような自動車を保管することを目的とする契約は、土地の利用そのものを目的とした賃貸借契約とは本質的に異なる権利関係ですので、この場合の駐車場の利用権は、その契約期間に関係なく、その土地自体に及ぶものではないと考えられるためです。ただし、車庫などの施設を駐車場の利用者の費用で造ることを認めるような契約の場合には、土地の賃貸借になると考えられますので、その土地の自用地としての価額から、賃借権の価額を控除した金額によって評価します。
この場合の賃借権の価額は、次の区分に応じたそれぞれの価額によります。
(1)地上権に準ずる権利として評価することが相当と認められる賃借権(例えば、賃借権の登記がされているもの、設定の対価として権利金や一時金の支払のあるもの、堅固な構築物の所有を目的とするものなどが該当します。)
自用地としての価額×賃借権の残存期間に応じその賃借権が地上権であるとした場合の法定地上権割合又は借地権であるとした場合の借地権割合のいずれか低い割合
(注)
1.「法定地上権割合」は、相続税法第23条に規定する割合です。
2. 自用地としての価額に乗ずる割合が、次の割合を下回る場合には、自用地としての価額に次の割合を乗じて計算した金額が賃借権の価額となります。
(1)の場合の自用地としての価額に乗じる割合:賃借権の残存期間と割合
①5年以下:5%
②5年超10年以下:10%
③10年超15年以下:15%
④15年超:20%
(2)(1)に掲げる賃借権以外の賃借権
自用地としての価額×賃借権の残存期間に応じその賃借権が地上権であるとした場合の法定地上権割合の2分の1に相当する割合
(注)
1.「法定地上権割合」は、相続税法第23条に規定する割合です。
2. 自用地としての価額に乗ずる割合が、次の割合を下回る場合には、自用地としての価額に次の割合を乗じて計算した金額が賃借権の価額となります。
(2) の場合の自用地としての価額に乗じる割合:賃借権の残存期間と割合
①5年以下:2.5%
②5年超10年以下:5%
③10年超15年以下:7.5%
④15年超:10%
(参考)駐車場の自用地としての価額の評価の仕方
駐車場として利用している土地は、現況により、ほとんどの場合、雑種地として評価することとなります。雑種地の価額は、その雑種地と状況が類似する付近の土地について評価した1平方メートル当たりの価額を基とし、その土地とその雑種地との位置、形状等の条件の差を考慮して評定した価額に、その雑種地の地積を乗じて計算した金額によって評価します。(評基通82.86.87)
上記のとおり、青空駐車場の財産評価は自用地として評価することとなり、その評価額は、原則として、「路線価×地積×地積の位置や形状による補正率」となります。
○貸家建付地
青空駐車場に賃貸アパートを建築した後の敷地は、「貸家建付地」となります。「貸家建付地」とは、貸家の目的とされている宅地のことをいいます。貸家建付地として評価する代表的な例は下記の敷地です。
・賃貸アパートの敷地
・貸家の敷地
・他者に賃貸している区分所有マンションの敷地権
「貸家建付地」について、国税庁タックスアンサーでは下記のとおり説明されています。
国税庁タックスアンサー №4614 貸家建付地の評価
[平成29年4月1日現在法令等]
貸家建付地とは、貸家の目的とされている宅地、すなわち、所有する土地に建築した家屋を他に貸し付けている場合の、その土地のことをいいます。貸家建付地の価額は、次の算式1により評価します。
(算式1)
貸家建付地の価額=自用地とした場合の価額-自用地とした場合の価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合
この算式1における「借地権割合」及び「借家権割合」は、地域により異なりますので、路線価図や評価倍率表により確認してください。路線価図や評価倍率表は国税庁ホームページで閲覧できます。また、「賃貸割合」は、貸家の各独立部分(構造上区分された数個の部分の各部分をいいます。)がある場合に、その各独立部分の賃貸状況に基づいて次の数式2により計算した割合をいいます。
(算式2)
賃貸割合=Aのうち課税時期において賃貸されている各独立部分の床面積の合計÷当該家屋の各独立部分の床面積の合計(A)
この算式2における「各独立部分」とは、建物の構成部分である隔壁、扉、階層(天井及び床)等によって他の部分と完全に遮断されている部分で、独立した出入口を有するなど独立して賃貸その他の用に供することができるものをいいます。また、継続的に賃貸されていたアパート等の各独立部分で、例えば、次のような事実関係から、アパート等の各独立部分の一部が課税時期(相続の場合は被相続人の死亡の日、贈与の場合は贈与により財産を取得した日)において一時的に空室となっていたに過ぎないと認められるものについては、課税時期においても賃貸されていたものとして差し支えありません。
(1)各独立部分が課税時期前に継続的に賃貸されてきたものであること。
(2)賃借人の退去後速やかに新たな賃借人の募集が行われ、空室の期間中、他の用途に供されていないこと。
(3)空室の期間が、課税時期の前後の例えば1か月程度であるなど、一時的な期間であること。
(4)課税時期後の賃貸が一時的なものではないこと。
貸家建付地の価額が、「土地及び土地の上に存する権利の評価明細書」を使用して評価することができます。(評基通26)
「貸家建付地」の財産評価額は、「自用地評価」による財産評価額から「借地権割合×借家権割合(30%)×賃貸割合」に相当する価額を減額した金額となります。この場合の借地権割合は、「路線価図」や「評価倍率表」(国税庁のホームページで確認できます)に記載されている割合を用いることになります。借地権割合が70%の土地に、賃貸アパートを建築し、賃貸割合(入居割合)が100%である場合の財産評価額は、次のとおりになります。青空駐車場に賃貸アパートを建築した後の土地の財産評価額は前述のとおり2,100万円の財産評価の圧縮効果があります。
・土地の財産評価額 1億円-(1億円×70%×30%×100%)=7,900万円
◆建物の評価
財産評価基本通達では、家屋の利用状態に応じて下記のとおり定められています。
・自用家屋の評価⇒固定資産税評価額
・貸家の評価⇒固定資産税評価額-(固定資産税評価額×借家権割合×賃貸割合)
つまり、賃貸アパートの家屋の財産評価額は固定資産税評価額×70%(賃貸割合が100%の前提)となるわけです。固定資産税評価額は建築した地域の市区町村によって評価額が決定され、固定資産税の課税明細書等で確認することができますが、建築に要した金額のおおよそ6割~7割程度の評価額になる場合が多いように思われます。
・固定資産税評価額=建築請負金額×おおよそ60%~70%
質問のケースで、建築請負金額が5,000万円のアパートを建築した場合(自己資金1,000万円+借入金4,000万円)には財産評価額は下記のように変化することとなります。
・建物の財産評価額
3,500万円-(3,5500万円×30%×100%)=2,450万円
※固定資産税評価額を3,500万円と仮定(5,000万円×70%)
・自己資金の減少(アパート建築資金)
△1,000万円
・借入金の増加(アパート建築資金)
△4,000万円