相続税の税務調査① 強制調査・任意調査

Q.相続税は税務調査が行われる可能性が高いと聞きました。税務調査の具体的な内容は、どのようなものなのでしょうか。

ポイント!

①相続税の税務調査が行われる割合は他の税目と比べて高くなっており、おおよそ20-30%の割合です。

②税務調査には「強制調査」と「任意調査」があります。

③相続税の税務調査は、毎年7-12月頃に実地調査が行われています。

④相続税の申告書を提出してから2-3年後に税務調査が行われる場合が多いです。

A. 相続税は税務調査が行われる確率が非常に高い税目です。国税庁の報道発表資料によると、平成27年事務年度の実地調査件数は11,935件で、平成28年事務年度の実地調査件数は12,116件であることが公表されています。平成27年事務年度(平成27年7月-平成28年6月)は、原則として平成25年中に相続が発生した方の調査が行われましたが、平成25年、平成26年における相続税の申告にかかる被相続人の人数は、平成25年54,421人、平成26年56,239人(国税庁報道発表資料)であることからすると、相続税の税務調査の割合はおおよそ20-30%であろうかと思われます。

◆税務調査には大きくは2つの種類があります。

「強制調査」と「任意調査」です。

「強制調査」とは、悪質な脱税の調査と告発を目的としたもので、裁判所で査察令状を発行したうえで、国税局の査察部が、強制的に臨検、捜査、差押を行うものです。当然事前の通知等はありませんので、令状を持った査察官(いわゆる「マルサ」)によってある日突然強制的な調査が行われることになります。

「任意調査」とは、提出された申告書が税法に則り正しく申告されていることを確認するを目的とし、国税通則法74条の3に規定されている質問権調査権に基づき行われます。税務調査の大半は「任意調査」によるものです。「任意調査」が行われる場合は、納税者(または税務代理人である税理士等)に対し、事前に通知が行われることになります。「任意調査」といっても、納税者側に選択権があるわけではありません。国税通則法127条には、質問検査権による調査を正当な理由なく拒み、妨げる場合の罰則規定が設けられており、納税者は質問検査権による税務調査を受任する義務があるものと考えられています。

「任意調査」は毎年7-12月の間に行うのが原則です。税務当局の事務年度は毎年7月-6月となっており、7月に各税務署、国税局の人事異動が完了した後、税務調査の事前通知が行われたうえで、納税者に対する実地調査が開始されます。税務調査は原則として12月末までに終了することとなりますが、事案によっては年越しとなるケースも出てきます。「任意調査」開始から調査終了までの一般的なスケジュールについて以下に紹介しましょう。

◆任意調査の一般的スケジュール

X年7-8月 所轄税務署資産税課から税理士あてに電話にて連絡。

※税務調査が行われることの事前通知が行われ、日程・調査対象者・実地調査者・実地調査場所等の選定が行われる。

X年9月  税務調査(実地調査)が行われる。

※税理士立会いのもと、朝10時-16時頃まで、税務調査官による実地調査等が行われる。

X年9-10月 税務調査官が指摘した内容(非違項目)について税理士に連絡   があり、税理士と税務調査官の間で意見交換。

X年11月  税務調査に基づき、自主的な修正申告書の提出と納税。