連帯債務と債務控除―債務控除の可否

Q.下記の各ケースにおいて、父親に相続が発生した場合の相続税計算において債務控除の可否について教えてください。

(A)父親が知人の借入債務の保証人になっている状態で相続が発生した場合(知人は借入債務弁済可能な状態)

(B)父親が知人の借入債務の保証人になっている状態で相続が発生した場合(知人は借入債務弁済不能の状態)

(C)父親が知人の借入債務の保証債務の履行を行った後に相続が発生した場合

A.[保証債務及び連帯債務] 相続税法基本通達14-3(一部省略・下線筆者)

保証債務及び連帯債務については、次に掲げるところにより取り扱うものとする。

(1)保証債務については、控除しないこと。ただし、主たる債務者が弁済不能の状態にあるため、保証債務者がその債務を履行しなければならない場合で、かつ、主たる債務者に求償して返還を受ける見込みがない場合には、主たる債務者が弁済不能の部分の金額は、当該保障債務者の債務として控除すること。

(2)以下省略

 

(A)父親が知人の借入債務の保証人になっている状態で相続が発生した場合(知人は借入債務弁済可能な状態)

保証債務については相続税の計算上債務控除の対象になりません(相続税法基本通達14-3(1),下線(直線)部分)。

(B)父親が知人の借入債務の保証人になっている状態で相続が発生した場合(知人は借入債務弁済不能の状態)

知人は弁済不能の状態にあるため保証債務者がその債務を履行しなければならない状態で、かつ、知人への求償権の行使が不能な場合には、知人が弁済不能な借入債務額が父親の相続税の計算上債務控除の対象となります(相続税法基本通達14-3(1),下線(青字)部分)。

なお、知人が弁済不能の状態であるのか否かについては、非常に困難な判断を要する場合がありますので、参考までに東京地裁の判例を紹介しておきます。

債務者(主たる債務者)が弁済不能の状態にあるか否かは、一般的に債務者が破産、知識、会社更生あるいは強制執行等の手続開始を受け、又は事業閉鎖、行方不明、刑の執行等により債務超過の状態が相当期間継続しながら、他からの融資を受ける見込みもなく、再起の目途が立たないなどの事情により事実上債権の回収ができない状態にあることが客観的に認められるか否かで決せられるべきである。(東京地裁 昭和59.4.26判決,税務訴訟資料136号352頁)

(C)父親が知人の借入債務の保証債務の履行を行った後に相続が発生した場合

知人に対する求償権に相当する金額を相続財産に計上するか否かについて判断することになります。

・知人への求償権行使可能 ⇒ 求償権が相続財産

・知人への求償権行使不能 ⇒ 求償権の計上不要

知人への求償権行使可能か不可能かについては、下記基本通達に基づき判断を行うことになります。

(賃金等の全部又は一部の切捨てをした場合の貸倒れ) 所得税基本通達51-11

賃金等について次に掲げる事実が発生した場合には、その賃金等の額のうちそれぞれ次に掲げる金額は、その事実の発生した日の属する年分の当該賃金等に係る事業の所得の金額の計算上必要経費に算入する。

(1)更生計画認可の決定又は再生計画認可の決定があったこと。これらの決定により切り捨てられることとなった部分の金額

(2)特別清算に係る協定の認可の決定があったこと。この決定により切り捨てられることとなった部分の金額

(3)法令の規定による整理手続によらない関係者の協議決定で、次に掲げるものにより切り捨てられたこと。その切り捨てられることとなった部分の金額

イ 債権者集会の協議決定で合理的な基準により債務者の負債整理を定めているもの

ロ 行政機関又は金融機関その他の第三者のあっせんによる当事者間の協議により締結された契約でその内容がイに準ずるもの

(4)債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その貸金等の弁済を受けることができないと認められる場合において、その債務者に対し、債務免除額を書面により通知したこと。その通知した債務免除額