名義預金の取扱い① 孫名義の預金

Q.父親に相続が発生しました。父親の相続人は、長男、二男の2人です。父親の自宅の金庫の中から、長男の子(甲)と二男の子(乙)の名義となっている銀行預金通帳が出てきました。

 ・A銀行B支店 甲名義の預金口座 相続時残高1000万円

・C銀行D支店 乙名義の預金口座 相続時残高1000万円

 父親から甲および乙に財産を贈与した事実はありません。

上記の預金口座は、父親の財産として申告する必要がありますか。

ポイント!

①相続税は、相続または遺贈により取得した財産の全部に対して課税されます(相続税法2条1項)

②被相続人から甲乙への贈与の事実が存在しないため、甲乙名義の預金口座内の預金が、被相続人の財産であるか否かについて判断する必要があります。

③甲乙名義の預金が被相続人の財産か否かについては事実認定の問題となります。

A.相続税は、被相続人の財産に対して課税されます。しかし、被相続人の財産であるか否かの判断が困難な場合があり、その代表例がいわゆる「名義預金」です。「名義預金」とは、「被相続人が他の者の名義を借りて作成した預金口座に蓄積された実質的には被相続人の預金」という意味で使われており、国税庁のホームページの「相続税の申告のしかた(平成29年分用)」の4頁では下記のように名義預金について説明されています。

Q&A 家族名義の財産は?

問:父(被相続人)の財産を整理していたところ、家族名義の預金通帳が見つかりました。この家族名義の預金も相続税の申告に含める必要があるのでしょうか。

答:名義にかかわらず、被相続人が取得等のための資金を拠出していたことなどから被相続人の財産と認められるものは相続税の課税対象となります。したがって、被相続人が購入(新築)した不動産でまだ登記をしていないものや、被相続人の預貯金、株式、公社債、貸付信託や証券投資信託の受益証券等で家族名義や無記名のものなども、相続税の申告に含める必要があります。

出典:http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/sozoku/shikata-sozoku2017/pdf/02.pdf [平成30年2月23日確認]

「名義にかかわらず、被相続人が取得等のための資金を拠出したことなどから被相続人の財産と認められるものは相続税の課税対象となります。」と記されています。被相続人の財産と認められるのか認められないのかの判断は事実認定の問題となるわけです。

◆では、事実認定はどのように行うべきなのでしょうか。被相続人に相続が発生していることから、本人に事情を確認することができませんので、相続人またはその名義預金者に下記内容を確認します。

①贈与の事実について:被相続人から預金名義者に贈与はあったのか?

②預金口座開設の経緯について:なぜ口座を開設したのか?

③預金口座開設時の手続者について:誰が口座を開設したのか?

④預金口座の銀行取引印について:銀行取引印は誰の印鑑なのか?

⑤預金口座の形成履歴とその原資について:預金口座はどのように形成されたのか?

⑥預金口座の出金履歴とその支出目的について:預金口座はどのように使用されていたのか?

⑦預金通帳およびカードの管理状況:誰が預金口座の入出金を行っていたのか?

⑧預金口座の銀行取引印の管理状況:銀行取引印は誰が管理していたのか?同じ銀行印が他の預金口座で使用されているのか?

上記の事項等を確認したうえ、その預金口座の残高が被相続人の財産と認められるのか、もしくは、預金名義者の財産と認められるのか、について判断したうえで申告をする必要があります。

◆被相続人の名義ではない預金口座内の預金残高が相続財産と認められるとして、相続税の税務調査で指摘されるケースがあります。税務調査においては、下記の事項を踏まえって事実認定を行いますので、事前によく検討したうえで申告書を提出する必要があります。

①預金の原資について:預金口座内の預金は、誰の原資で蓄積されたものなのか?

②預金口座の管理保管について:預金口座の通帳、カード、銀行印は誰が管理保管していたのか?

③預金口座の運用について:預金口座の入出金や投資等の判断は誰の意思に基づき行われていたのか?