小規模宅地等の評価減の特例⑤ 駐車場のケース

Q.父親が所有する土地は駐車場として利用されています。地積は200㎡で6台駐車できるスペースがあります。父親に相続が発生した場合、この駐車場用地に小規模宅地等の評価減の特例を適用することは可能でしょうか。なお、駐車場は砂利敷きで駐車スペースは1台ごとに区分けされています。

ポイント!

①小規模宅地等の評価減の特例の対象となる宅地等は、個人が相続または遺贈により取得した宅地等のうち、相続開始の直前において、被相続人等の事業の用または居住の用に供されていた宅地等で、「一定の建物または建築物の敷地の用に供されていたもの」とされています。

②駐車場施設が、「一定の建物または建築物」に該当するか否かを判断する必要があります。

③相続または遺贈により取得した人は、相続税申告期限まで事業承継および継続保有することが要件です。(租税特別措置法69条の4第3項4号、同法施行規則23条の2第1項)

A.貸付事業用宅地等とは、被相続人の貸付事業の用に供されていた宅地等で、次表の区分に応じ、それぞれに掲げる要件のすべてを満たしたものをいいます。要件を満たした場合には、200㎡を限度に50%の割合で課税価格を減額することができます。

 ①区分:被相続人の貸付事業の用に供されていた宅地等

適用要件:その宅地等に係る被相続人の貸付事業を相続税の申告期限までに承継し、かつ、その申告期限までその貸付事業を行っていること。その宅地等を相続税の申告期限まで有していること。

②区分:被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の貸付事業の用に供されていた宅地等

適用要件:相続開始の直前から相続税の申告期限まで、その宅地等に係る貸付事業を行っていること。その宅地等を相続税の申告期限まで有していること。

 

 ◆このQにおいて、ポイントは2点あります。

1点目は、6台の駐車場が「事業の用」に供されていた宅地等に該当するか否かの判断です。所得税の不動産所得計算に係る事業的規模の判定において5棟10室基準がありますので、6台の駐車場賃貸業は事業的規模に満たさず、適用不可であるとされる場合があります。しかし、小規模宅地等の評価減の特例における「事業」とは、「事業に準ずるものとして政令で定めるものを含む」とされています。ここにいう準ずるものとして政令で定めるもの」とは「事業と称するに至らない不動産の貸付けその他これに類する行為で相当の対価を得て継続的に行うもの」(租税特別措置法施行令40条の2第1項)とされています。よってこのQにおいて、6台の駐車場賃貸は、事業であると判断することができます。

2点目は、砂利敷きの駐車場が「構築物」に該当するか否かの判断です。「一定の建物又は建築物」とは、租税特別措置法施行規則にて、次に掲げる建物または構築物以外の建物または構築物とされています。

租税特別措置法施行規則23条の2第1項1号・2号

一 温室その他の建物で、その敷地が耕作の用に供されるもの

二 暗渠(あんきょ)その他の構築物で、その敷地が耕作の用又は耕作もしくは養畜のための採草もしくは家畜の放牧の用に供されるもの

 

◆ 耐用年数省令の別表第一(機械及び装置以外の有形減価償却資産の耐用年数表)における構築物」の中には、「舗装道路及び舗装路面(コンクリート敷、ブロック敷、れんが敷又は石敷のもの)」とあります。また、耐用年数の適用等に関する取扱通達(第3節構築物)には次の記載があります。

(砂利道)耐用年数通達2-3-13

表面に砂利、砕石等を敷設した砂利道又は砂利路面については、別表第一の「構築物」の「舗装道路及び舗装路面」に掲げる「石敷のもの」の耐用年数を適用する。

上記から勘案すると、砂利敷の駐車場は「構築物」に該当するのではないかと考えられますが、実務上は現地調査を行ったうえ、総合的に判断することが求められます。

 

◆小規模宅地等の特例の適用に関して、構築物または建物の敷地の用に供されていないとの理由から同条の対象となる宅地等に該当しないとした裁決事例がありますので、以下にその要旨を紹介しておきます。

小規模宅地等に該当しないとされた裁決事例(下線筆者)(租税特別措置法第69条の3の該当の有無)

租税特別措置法第69条の3(小規模宅地等の特例)の適用に関し、構築物又は建物の敷地の用に供されていないとの理由、また、相当な対価を得て貸し付けられていない等の理由から、同条の対象となる宅地等に該当しないとした事例(棄却・平成3年分相続税・平07-01-25裁決)

(裁決の要旨)                   TAINSコード:J49-4-25

被相続人は、不動産賃貸を事業的規模で行っていたものであり、本件A物件(宅地)は砂利敷きの月ぎめ駐車場として貸し付け、また、本件B物件(宅地)はアスファルト敷きで長女に賃貸していたので、いずれも、租税特別措置法第69条の3の規定により、小規模宅地等の特定の適用を認めるべきである旨、請求人は主張する。しかし、本件A物件については、砂利を敷設したのは10年くらい前であると認められ、平成5年現在、砂利は地中に埋没して土地の一部とみられる状態になっており、相続開始直前においても当該砂利敷きは構築物とはいえない状態になっていたと推認されるところから、構築物若しくは建物の敷地の用に供されていないので、事業の用に供されていたかどうかを判断するまでもなく小規模宅地等の特例の対象となる宅地等には該当しない。また、本件B物件については、長女に対する賃貸料が付近の通常の賃貸料に比し著しく低廉と認められるので、相当な対価を得て貸し付けられていたとは認められないので、事業の用に供されていたとは認められないから、小規模宅地等の特例の対象となる宅地等には該当しない。

裁決年月日 H07-01-25 裁決事例集 J49-4-25【裁決事例集第49集428頁】

この裁決において、砂利が地中に埋没していることから土地の一部とみられ、砂利敷きは構築物とはいえないと述べられています。つまり、砂利敷きは原則としては「構築物」であると認められるが、その砂利敷きの現況によく鑑みたうえ、構築物と認められるか否かを判断することが必要です。土地の評価および特例の適用可否判断において、現地で現況を確認することが非常に重要であるということを示した裁決事例です。