遺産分割をやり直した場合の課税

Q.遺産分割協議を行って、相続税の申告書を税務署に提出した後に、遺産分割協議をやり直した場合の税務の取扱いについて教えてください

ポイント!

①遺産分割協議を行って相続税の申告書を提出した後に、遺産分割協議をやり直した場合は、「贈与」または「譲渡所得税等」の課税関係が生じることになります(相続税法基本通達19の2-8)。

②ただし、当初の遺産分割協議をやり直すことに、やむを得ない事情があり、遺産分割協議が合意解除された場合においては、その事情等を勘案して、総合的に判断する必要があると思われます。

A.相続人間で遺産分割協議を行い、その分割協議の内容に沿った相続税の申告書を税務署に提出した後に、相続人間で遺産分割協議をやり直した場合の課税の取扱いについてのQです。相続税法基本通達19の2-8では、「分割の意義」について下記の通り定められています。

◆相続税法基本通達19の2-8

法第19条の2第2項に規定する「分割」とは、相続開始後において相続または包括遺贈により取得した財産を現実に共同相続人又は包括受遺者に分属させることをいい、その分割の方法が現物分割、代償分割、若しくは換価分割であるか、またその分割の手続が協議、調停もしくは審判による分割であるかを問わないのであるから留意する。ただし、やり直しとして再配分した場合には、その再配分により取得した財産は、同項に規定する分割により取得したものとはならないのであるから留意する。

◆分割協議をやり直した場合の課税関係については下記の通りとなります。

【ケーススタディ】

たとえば、被相続人X(法定相続人 長男Aと二男Bの2人)の財産1億円をAが5000万円、Bが5000万円を取得する内容で当初遺産分割協議が成立したとします。この場合、相続税の申告における各人の相続税額の負担は次のとおりとなります。

・相続税 ⇒ 長男A 385万円、二男B 385万円

◆上記の相続税の申告書を提出した後、AとBは遺産分割協議について再協議を行いました。その結果、Aが7000万円、Bが3000万円を取得する内容で、遺産分割協議をやり直したとします。この場合は、相続税法基本通達19の2-8では、再配分により取得した財産は分割により取得したこととはならないと記されています。つまり、遺産分割協議をやり直した結果、Aは当初の遺産分割より2000万円多く財産を取得することになりましたが、税務上の取扱いは、相続で取得したものとは考えず、BからAに対して2000万円の贈与があったとしてAに贈与税が課されることになります。

・贈与税 ⇒ 長男A 695万円

       2000万円-110万円=1890万円

       1890万円×50%-250万円=695万円

◆ただし、当初の遺産分割協議にやむを得ない事情(たとえば、当初の分割協議書が偽造されたものであった場合や、取得した財産が被相続人の財産でないことが訴訟により確定した場合など)があった場合に遺産分割協議が合意解除された場合などについては、その事情等を勘案したうえ、総合的に判断する必要があると考えられます。