遺言と異なる内容の分割協議についての課税

Q.父親は遺言を残して亡くなりました。相続人の母親と長男は、遺言と異なる内容で遺産分割協議を成立させました。相続税の申告書はいまだ提出していない状況です。この場合の、課税上の取扱いは下記(A) (B)のいずれになるでしょうか。

(A)遺言の内容で相続税が課税された後に、遺言と分割協議の差異について贈与税または譲渡所得税が課税される。

(B)遺産分割協議の内容で相続税が課税される。

ポイント!

①遺言書がある場合でも、相続人が分割協議によって、遺言書と異なる内容について遺産分割協議を成立させることは可能です。

②相続税の申告書提出前に遺産分割協議の内容で申告を行った場合、相続税のみで課税関係は終了します。

③相続税の申告書を遺言の内容で提出した後に、遺産分割協議を行った場合は、当初の相続税に加えて、遺言と分割協議の差異について贈与税や譲渡所得税が課されることになります。

A.「(B)遺産分割協議の内容で相続税が課税される」が正解です。

遺言書が残されている場合でも、相続人全員の合意により、遺産分割協議によって、相続財産を分割することは可能です。税務上も遺産分割協議の内容に基づいて相続税の申告納税を行うことにより課税関係は完了することとなります。

ところで、このQのケースにおいて、遺言の内容で先に相続税の申告書を提出してしまっていた場合はどうなるでしょうか。この場合は、遺言の内容で相続税の課税が完了すると考えられています。そして相続人全員の合意による遺産分割協議は、遺言による財産分割完了後の財産の移転であると考え、贈与税や譲渡所得税が課税される取扱いとなっています(相続税法基本通達19の2-8)