相続財産の分け方③代償分割のケース

Q.母親に相続が発生しました。法定相続人は長男と長女の2人です。母親の相続財産は、自宅土地300㎡(時価:1億円、相続税評価額:8000万円、固定資産税評価額:7000万円)と自宅建物(固定資産税評価額500万円)です。相続人間で、自宅土地建物は長男が相続するが、長男と長女で相続財産は均等に分けたいとの話し合いが成立しています。どのような分割方法がありますか。

ポイント!

①財産の分割方法には、①現物分割、②換価分割、③代償分割があります。

②土地建物は長男が取得したうえで、母親の相続財産は長男長女で均等に相続する要望があるため、代償分割がふさわしいと考えます。

③代償分割の場合、長男から長女に支払う代償金の金額の設定が困難になる場合が多いため、長男が相続する不動産の価値の算定について、相続人間でよく話し合いを行う必要があります。

A.代償分割とは、ある相続人が相続財産を取得する代わりに、他の相続人に金銭を支払う方法です。相続財産を現物で分割することが困難である場合、相続財産を換金することが困難である場合等に使われる分割方法です。このQのケースでは、長男が相続財産である自宅土地建物を取得する代わりにその代償として長女に金銭の支払いを行うことになります。

 

◆代償分割を行う場合の遺産分割協議書の書き方は一般的には次のとおりです。

代償分割の場合の遺産分割協議書(例)

第〇条 下記の財産は、相続人○○が単独で取得するものとする。

(土地)

所在:〇区〇町〇丁目

地番:〇番

地目:〇〇

地積:〇〇㎡

(建物)

所在:〇区〇町〇丁目〇番地

家屋番号:〇番

種類:〇〇

構造:〇〇

床面積:〇〇㎡

第△条 相続人○○は上記第〇条に記載する財産を取得する代償として、相続人△△に対して、金■■■■円を、□年□月□日までに支払うものとする。

 

◆代償分割を行った場合の税金の申告の取り扱いは下記の通りです。

【相続税】

長男の課税価格

不動産(土地建物)の財産評価額-代償金

長女の課税価格

代償金

 

◆代償分割を行う場合に最も留意するべき事項は、代償金の設定です。このQのケースで、自宅土地建物の価値をいくらと考えるのが妥当であるのかについて、相続人間でよく話し合う必要があります。時価を基準にして代償金の設定を行うこととなった場合には、不動産鑑定士の作成する鑑定評価額を用いる場合もあれば、不動産会社が作成する売却想定金額を用いる場合もあり、相続人間での代償金の合意が非常に困難になるケースが増加しています。代償分割を行う場合は、相続人間で代償分割の対象となる資産の評価額についてよく話し合いを行ったうえで、分割協議を行うことが重要です。