相続税申告書提出要否の判定②負担付遺贈のケース

Q.父親の相続が発生しました。父親の法定相続人は長男と長女の2人です。父親の相続財産は下記の通りで、公正証書遺言によってそれぞれ次のとおり財産の取得者が指定されています。この場合、相続税の申告書の提出は必要でしょうか。

・土地(相続税評価額1500万円) ⇒ 長男

・アパート建物(相続税評価額1000万円) ⇒ 長男

・アパート建築借入金(△5000万円) ⇒ 長男

・銀行預金(6000万円) ⇒ 長男1000万円、長女5000万円

◆ポイント!

・相続税の申告書の提出の要否は、相続または遺贈により財産を取得した人の課税価格の合計額が基礎控除額を超えるか否かにより判断します(相続税法15条1項)。

・課税価格の合計額は、相続または遺贈により取得したすべて者にかかる相続税の課税価格の合計額です。

・相続税の課税価格とは、相続または遺贈により取得した財産の価額の合計額です(相続税法11条の2第1項)。

相続税の申告書の提出の要否は、相続または遺贈により財産を取得した人の課税価格の合計額が基礎控除額を超えるか否かにより判断します。

  • 課税価格の合計額 < 基礎控除額 ⇒ 申告書の提出は不要
  • 課税価格の合計額 > 基礎控除額 ⇒ 申告書の提出は必要

◆質問のケースにおいて、相続人は長男と長女の2人ですので、相続税の基礎控除額は4200万円となります。

相続税の基礎控除額 = 3000万円+600万円×2人 = 4200万円

◆相続税の課税価格の合計額とはどのように算出するのでしょうか。相続税の課税価格の合計額とは、「相続または遺贈により財産を取得したすべての者にかかる相続税の課税価格の合計額」となります。このQのケースでは、相続により財産を取得する長男の課税価格の合計額と長女の課税価格の合計額となります。

課税価格の合計額 = 長男の課税価格の合計額 + 長女の課税価格の合計額

まず、長男の課税価格の合計額を算出します。

・土地 1500万円

・アパート建物 1000万円

・銀行預金 1000万円

・アパート借入金 △5000万円


計 △1500万円 ⇒ 0円

次に、長女の課税価格の合計額を算出します。

・銀行預金 5000万

これを合計します。

長男と長女の課税価格の合計額

0万円 + 5000万円 = 5000万円 > 4200万円(基礎控除額)

⇒ このケースでは、相続税の申告書の提出が必要になります。