相続税申告書提出要否の判定①死亡保険金&債務控除のケース

Q.母親が亡くなりました。法定相続人は長男、長女の2人です。母親の遺した財産は次のとおりですが、相続税の申告書の提出は必要でしょうか。

・土地(自宅敷地) 3000万円(令和2年路線価に基づく財産評価額)

・建物(自宅家屋) 200万円(令和2年固定資産税評価額)

・預貯金 1200万円

・死亡保険金 1000万円(受取割合:長男50%、長女50%)

・葬儀費用 300万円

◆ポイント!

①被相続人である母親の法定相続人は長男及び長女の2人であるため、相続税の基礎控除額は、3000万円+600万円×2人=4200万円です。

②死亡保険金の非課税枠は、500万円×法定相続人の数(2人)=1000万円です(相続税法第12条1項)。

③葬儀費用は、課税価格から控除することができます(相続税法第13条1項)

◆相続税の基礎控除額の算式は次のとおりです。

基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人の人数

相続税の申告書の提出の要否は、相続または遺贈により財産を取得した人の課税価格の合計額が基礎控除額を超えるか否かにより判断します。

  • 課税価格の合計額 < 基礎控除額 ⇒ 申告書の提出は不要
  • 課税価格の合計額 > 基礎控除額 ⇒ 申告書の提出が必要

このQでは、被相続人である母親の法定相続人は長男と長女の2人ですので、相続税の基礎控除額は4200万円となります。

◆相続税の課税価格の合計額は、どのように計算するのでしょうか。ポイントは2点あります。

1点目は、死亡保険金の非課税限度額を引く前の金額で判定するのか、非課税限度額を引いた後の金額で判定するのか、です。

死亡保険金の非課税限度額は、500万円×法定相続人の人数

このQでは、死亡保険金は1000万円で、受取額は長男500万円、長女500万円でした。死亡保険金の非課税限度額は、上記算式によれば、500万円×2人=1000万円ですので、相続人が受け取った1000万円の死亡保険金はすべて非課税となり、課税価格に算入しないことになります。つまり、死亡保険金は非課税限度額を引いた後の金額で判定することになります。

2点目のポイントは、葬儀費用などの債務控除額を控除する前の金額で判定するのか、控除した後の金額で判定するのか、です。債務控除については、相続税法第13条1項において規定されています。葬儀費用等の債務控除後の金額が基礎控除額を超えているか否かで相続税の申告書の提出要否を判断することになります。

◆以上のことから、このQにおける相続税の課税価格の合計額は、下記の通り算出することとなります。

・土地 3000万円

・建物 200万円

・預貯金 1200万円

・死亡保険金 0万円(受取1000万円-非課税1000万円)

・葬儀費用 △300万円



     4100万円 ・・・・・・ 相続税の課税価格の合計額

相続税の課税価格の合計額 4100万円 < 基礎控除額 4200万円

⇒このケースでは、申告書の提出は不要となります。