数次相続が起こった場合の遺産分割の工夫

Q. 平成29年8月1日に、父親の相続が発生しました。父親の法定相続人は、母親、長男、長女の3人です。父親の相続財産は預金3億円です。平成29年10月1日、父親の遺産分割協議が終わる前に母親が亡くなってしまいました。母親の法定相続人は長男、長女の2人で、母親の固有の財産は、預金3000万円です。遺産分割協議はどのように行うのでしょうか。また、相続税の申告はどのように行うのでしょうか。

 

ポイント!

①数次相続があった場合は、すでに亡くなっている相続人の相続人が代わりに遺産分割協議に参加することになります。

②父親の遺産分割協議において、長男と長女は、父親の相続人である地位と、父親の相続人である母親の相続人という2つの地位を有しますが、結果として長男と長女の2人で遺産分割協議を行います。

③母親の遺産については、長男と長女の2人で遺産分割協議を行うことになります。

④相続税の申告書は、父親の相続と母親の相続で別々に提出し、納税する必要があります。父親の相続については、平成30年6月1日が申告納税期限となり、母親の相続については、平成30年8月1日が申告納税期限となります。

⑤父親の遺産分割協議内容で相続税額の合計(父親と母親の相続による相続税額の合計額)が変わることとなります。

 

A.このQでは、父親が亡くなった後、相続人である母親、長男及び長女が父親の遺産分割協議を成立させる前に、母親が亡くなってしまいました。このように、遺産分割協議が成立する前に、本来、遺産分割協議に参加するべき相続人が亡くなることを「数次相続」といいます。遺産分割協議は、父親と母親の協議を別々に両方行う必要があります。父親の相続人である母親はすでに亡くなっていますが、父親の遺産分割協議の当事者は誰になるのでしょうか。父親の相続人である母親の代わりに、母親の相続人である長男と長女が父親の遺産分割協議に参加することとなります。つまり、父親の遺産分割協議は母親の代理人としての地位を有する長男と長女は2つの地位を有した状態で父親の遺産分割協議を行うことになります。結局のところ、父親の遺産分割協議は、長男と長女の2人での話し合いとなります。数次相続が起こった場合の相続税の申告は、父親と母親と別々に申告を行う必要があります。

 

◆父親の相続税の申告のポイント

・相続税の納税申告期限は、平成30年6月1日

・法定相続人3人で、基礎控除額、相続税の総額の計算を行う。

・母親が取得した財産について、配偶者の税額軽減制度の適用は可能。

 

父親の相続税の申告において、母親が父親から取得した財産について配偶者の税額軽減制度の適用が可能ですので、父親の遺産分割協議において母親がどれぐらいの財産を取得するのかにより、父親の相続における相続税額(一次相続の相続税額)と母親の相続における相続税額(二次相続の相続税額)の合計額が変わるということになります。