G20 法人課税 最低15%以上で「歴史的合意」

 20か国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は7月10日、国際的な法人課税の新ルールを大枠で合意しました。世界共通となる最低税率の設定と、巨大IT(情報技術)企業などを念頭に置いたデジタル課税の導入を柱とし、10月の最終決着に向けての前進となりました。実現すれば国際課税ルールの歴史的な転換となります。

共同声明は、経済協力開発機構(OECD)が7月1日に事務レベルで合意した内容について、G20として「承認する」と強調しました。今後、制度の詳細を詰め、10月の最終決着を目指す方針も盛り込みました。中国やインドなど欧米の主要国以外も含まれるG20の政治レベルで賛同を取り付けたことに大きな意義があります。一方で、OECDの交渉に参加した139カ国・地域のうち、低税率国のアイルランド(12.5%)など8カ国がまだ合意に加わっていません。多国籍企業が税率の低い国・地域に子会社を置き、租税回避するのを防ぐ狙いから、こうした低税率国にも同意を呼びかけていきます。OECDは最低税率が導入されれば税収が年16兆円以上増えると予想しています。デジタル課税は売上高200億ユーロ(約2.6兆円)、税引き前の利益率が10%超の企業100社程度を対象とし、米IT大手などへの課税強化を想定しています。工場や支店などの物理的な拠点がなくても、サービスの利用者がいればその国で税金を徴収できるようにしていく考えです。

※租税回避とは:多国籍企業による各国・地域の税率差を利用した節税のことです。税率の高い国で計上するのが自然である所得を、低税率国の関連会社に移し替え、グループ全体として税負担を軽くする手法です。税率が高い国の会社から低い国の関連会社に高額の利子を払う例もあります。高税率国の会社が開発した特許などの無形資産を低税率国の関連会社に譲渡し、その関連会社で特許収入を稼ぐ方法も行われています。