小規模宅地等の評価減の特例① 特定居住用宅地等のケース

Q.現在、父母と長男の家族は同居しています。自宅の土地と建物は父親名義です。父親の法定相続人は、母と長男と二男の3人です。自宅の土地の相続にあたり、適用できる特例制度とはどのようなものでしょうか。

ポイント!

①小規模宅地の特例制度とは、適用要件を満たす場合、土地の財産評価額の一定割合について、相続税の課税価格を減額する制度です。

②特定居住用宅地等に係る小規模宅地等の特例は、適用要件を満たす場合、宅地等の地積330㎡まで80%の割合で課税価格を減額します。

③特例の適用を受けるためには、相続税の申告に適用を受ける旨の記載及び計算明細書等の提出が必要です。

A.「特定居住用宅地等に係る小規模宅地等の特例」とは、個人が相続や遺贈により取得した被相続人の居住していた宅地等のうち、次の要件を満たす宅地等は、限度面積330㎡までの部分について、80%の割合によって課税価格を減額する制度をいいます。被相続人や同居親族の居住に使われていた宅地等は、遺族にとって生活に必要なものであり、この特例はその宅地に相続税が課税されることにより、遺族の生活に支障が生じてしまうことを防ぐために設けられています。平成27年1月1日以降、相続税の基礎控除額は減額になりましたが、特定居住用宅地等に係る小規模宅地等の特例の適用限度面積は、従来の240㎡から330㎡まで拡大されています。特例の適用の可否は、税負担の額に大きな影響を与えるので、適用要件の正確な把握が必要です。

適用要件は下記の通りです。適用要件のすべてを満たす場合のみ、特例の適用を受けることが可能になります。

◆被相続人等の居住の用に供されていた宅地等であること

被相続人、または、被相続人と生計を一にする被相続人の親族の居住の用に供されていた宅地等であること。宅地等の等は、借地権を含むという意味です。

◆下記の者が相続遺贈により宅地等を取得し、一定の要件を満たすこと

(イ)被相続人の配偶者(取得者ごとの要件はない)

(ロ)被相続人と同居していた親族で、相続税の申告期限まで、その家屋に居住し、かつその宅地等を相続税の申告期限まで有している人。

(ハ)被相続人と同居していない親族でいわゆる「家なき子特例」要件を満たすこと。

 

※「家なき子特例」とは:①から③のすべてに該当する場合で、かつ次の④及び⑤の要件を満たす人

①相続開始の時において、被相続人もしくは相続人が日本国内に住所を有していること、または、相続人が日本国内に住所を有しない場合で日本国籍を有していること

②被相続人に配偶者がいないこと

③被相続人に、相続開始の直前においてその被相続人の居住の用に供されていた家屋に居住していた親族でその被相続人の相続人(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合の相続人)である人がいないこと

④相続開始前3年以内に日本国内にあるその人またはその人の配偶者の所有する家屋(相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋を除く)に居住したことがないこと

⑤その宅地等を相続税の申告期限まで有していること