小規模宅地等の評価減の特例③ 二世帯住宅のケース

Q.長男世帯と両親世帯は分離型の二世帯住宅に住んでいます。1階は両親世帯、2階は長男世帯が居住しており、玄関は別々で、内部で行き来ができない構造になっています。長男が住宅ローンを借り入れする都合上、1階と2階で区分登記がされており、1階は父親所有で2階は長男所有の状態です。1階と2階の床面積は同じ広さです。敷地(地積200㎡) は父親が所有しています。父親に相続が発生した場合、小規模宅地等の特例の適用は可能でしょうか。

ポイント!

①父親の居住の用に供されていた宅地等に該当する地積は、敷地面積の2分の1となります。

②長男は父親の同居親族とは認められません。

③敷地を母親(配偶者)が相続した場合は、敷地地積の2分の1が特定居住用宅地等に該当し、80%の割合で課税価格が減額されます。

④敷地を長男が相続した場合は、敷地全体が特定居住用宅地等に該当しません。(租税特別措置法69条の4第3項2号イ、同法施行令40条の2第10項、同法関係通達69の4-21)

A.二世帯住宅の敷地を相続した場合における小規模宅地等の特例適用の可否について、税務トラブルが多くなっています。まず、被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当する範囲を検討する必要があります。このQのケースでは、父親が所有してる敷地200㎡のうち、建物の1階部分に相当する地積が被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当することになります。つまり、200㎡×1/2=100㎡が被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当することとなります。

 つぎに、特定居住用宅地等の判定に進みます。配偶者が相続する場合は100㎡が特定居住用宅地等に該当することになり、80%の減額対象となります。

 長男が相続する場合、長男は被相続人である父親と同居親族ではないため、特定居住用宅地等に該当する部分はありません。

 一棟の建物の内部で行き来ができない分離型の二世帯住宅の場合、区分所有建物の登記がある場合は、被相続人の居住の用に供されていた宅地等の地積は、区分登記の割合に対応することとなり、一部特例適用対象外となります。一方、区分所有建物の登記がない場合は、敷地全体が被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当することとなります。また、一棟の建物の内部で行き来ができる同居型の二世帯住宅の場合、敷地全体が被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当します。